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更新日:2023年4月13日
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事業者 |
森民酒造本家(外部サイトへリンク) 代表取締役 森 徳英 氏 店舗所在地:宮城県仙台市若林区荒町53番地 |
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採択 | 事業再構築補助金 令和3年11月(第3回) |
既存事業 | 日本酒の製造および販売 |
事業再構築の類型と内容 |
新分野展開 酒蔵の隣に、甘酒をコンセプトとしたカフェを開設。これまで日本酒と接点がなかった層へアプローチする機会を創出した。 |
開設店舗 |
店舗所在地:宮城県仙台市若林区荒町53番地 |
森民酒造本家は嘉永二年(1849年)に創業。事業再構築補助金を活用し、173年間にわたって使い続けてきた酒蔵を大改修した後、森民酒造本家の原点である甘酒をコンセプトにしたカフェを開設しました。
6代目当主の森徳英さんに、新事業に取り組むまでの経緯や展望について、お話を伺いました。
─ はじめに、御社のこれまでの事業を教えてください。
森民酒造本家は、嘉永二年(1849年)に創業した酒蔵です。
甘酒の行商をしていた初代・民蔵は、非常に清らかな水が湧く荒町に身を据え、酒蔵を建造。以降、173年にわたり日本酒づくりを続けてきました。「森乃菊川」「森民」などの銘柄を中心に、蔵人の手で一つ一つ、丁寧につくっています。
創業当時から同じ酒蔵を使っていましたが、昨年大改修を行いました。
─ 173年間も使い続けてきた酒蔵を改修しようと思ったきっかけは何だったのでしょう。
歴史のある蔵ですが、東日本大震災の影響で大きなダメージを負ってしまい、酒をつくる環境としては望ましくない状態でした。温度管理が難しく、酒樽を布団でくるんだり、泊まり込みで作業が必要だったり…。
令和元年に6代目当主として事業承継したときに、この蔵を維持することよりも、環境を整えてこれまで以上にいいお酒をつくることが大事だと思い、蔵の大改修に踏み切ったんです。
▲改修前の蔵の様子
─ 蔵の改修と併せて甘酒カフェをオープンしようと考えたのはなぜですか。
長い歴史の中で、私たちは酒づくりを丁寧に行ってきました。酒づくりは日本の文化です。だから、これからもその価値を継続していきたい、美味しい酒をつくっていきたいと思っています。
しかし、コロナ禍もあって、日本酒の消費量は大きく減少していて、今後も厳しい状況が続く見込みです。
このような状況の中で、私たちに何ができるか、私たちの強みは何かと考えたときに、長年培ってきた麹の製造技術と地理的な優位性があると思い至りました。
麹の製造技術を活かし、多くの人に楽しんでもらえるものとして「甘酒」をつくることを考えました。
甘酒はアルコールを含まず、健康効果もあり、若い方やお酒を飲まない方にも楽しんでもらえます。また、森民酒蔵本家の初代・民蔵は、荒町で創業する前には南部地方伝統の甘酒を仕込み、町を行商していたので、私たちのルーツでもあります。
そして、森民酒蔵本家は、荒町という都市の中心街エリアにあります。各地の酒蔵は郊外エリアに立地していることが多いので、新幹線が停まるJR仙台駅から近くて、どの地域からでも足を運びやすいロケーションは、私たちの大きな特長です。
このような私たちの強みを、甘酒カフェという形で活かしたいと考えました。
─ 蔵の見学ツアーを行う酒蔵も多いと思いますが、カフェという形態を選んだのはなぜですか。
もちろん、酒蔵見学やオリジナルラベルづくりといった体験コンテンツもご用意しています。ただ、日本酒の蔵見学は、季節ごとに作業工程が違うため、原材料から完成品までの作業工程全体を見ていただくことは難しく、地味な印象になりがちです。「1回行ったし、もう行かなくてもいいかな」と思われてしまうかなと。
お客様には何回も蔵へ足を運んでほしいという気持ちがあったので、カフェという形を選びました。
─ カフェではどのようなメニューが人気ですか。
甘酒はもちろん、酒米のおにぎりと麹を使ったスープのセットも人気です。
酒米はその名のとおり日本酒を仕込むためのお米なので、普通はそのまま食べることはありません。ですが、私たちが酒造りでどのようなお米を使っているかをお客様に知ってもらいたいと思い、おにぎりにしてカフェで提供しています。
麹のスープは、試行錯誤して作り上げた力作です。麹ならではのうま味がクセになります。
▲酒米のおにぎりと糀を使ったスープのセット
─ カフェ空間も居心地が良いですね。
店内は国産杉を使って暖かな雰囲気にしています。カウンターには地元の秋保石を使い、床材の一部には酒蔵で使っていた大桶の蓋を使用するなど、“仙台らしさ”“酒蔵らしさ”を感じてもらえるように細部までこだわりました。
のれんに使用しているロゴマークは、甘酒を行商していた初代民蔵をモチーフにしています。ロゴマークを始め、店舗紹介リーフレット、ホームページなど、東北工業大学産業デザイン学科の先生に協力いただき、統一感のあるデザインになりました。
─ 2022年6月のオープン以降、お客様からの反応などはいかがですか。
オープン直後はテレビ番組で特集していただく機会が多く、50~60代の女性のお客様がよく来店されます。ありがたいことに、リピーターになってくださるお客様も多くいらっしゃいます。
カフェ周辺には大学や専門学校がたくさんあるので、若い方たちにも足を運んでほしいと思い、オープンと同時にInstagramも始めました。フォロワーもだんだん増えてきており、若い世代の認知度も上がってきていると思います。2023年に東北学院大学の五橋キャンパスができたら、客層に幅が出るのではないかと期待しています。
─ 事業再構築補助金の申請にあたり、七十七銀行へ相談したとお伺いしていましたが。
コロナ禍でいろいろな補助金を自分で調べていたので、事業再構築補助金のことは知っていたのですが、補助金を使ったことはあまり無かったので、七十七銀行の担当者へ相談しました。
資料づくりや事業計画書の作成を親身になってサポートしてくださり、事業計画書に入れる参考資料の作成・収集や、計画書はカラフルに仕上げて当初のメインターゲットである若い女性が見てもカフェの構想イメージを伝わるよう意識するなど、アドバイスも具体的で助かりました。
また、一人で長文を書いていると、どうしても誤字脱字を見落としやすくなってしまうので丁寧に添削・推敲してくださったのも個人的には有難かったです。
既存の日本酒製造・販売事業と並行しながらの申請書類作成は大変でしたが、こうした補助金は制度があるうちに有効活用しないともったいないと感じました。自営業者たちから「補助金のことは知っているけど、ハードルが高い」「チャレンジしたけどもダメだった」という声もよく聞きますが、新しい取り組みを考えている方は、粘り強くチャレンジしてほしいです。その価値があると思います。
─ 一人で作り上げるのは難しく、支援されたから完成できた計画なんですね。
カフェ事業に限らず、既存の日本酒製造・販売事業でも色んな人に支援いただいています。森民酒造には岩出山と長町に分家がいます。
岩出山の森民酒造さんは、私より酒づくりの先輩なので、仕込みをするときによくアドバイスをいただいています。
長町のモリタミさんは不動産業が主でもう酒づくりはされていないのですが、マーケティングでよく相談しています。そういうときに森民の歴史というか、色んな方と支えあった縁で170年以上も続けられているんだと感じます。
─ いままでとは違う新分野に進出してみて、課題などはありましたか。
現状カフェを運営している中で「オペレーションをスムーズにする・スタッフに慣れてもらう」という課題があります。頭の中で「この仕組みなら、3分でお客様に提供できるな」と思っていても、実際には5分かかったり、その間にまた別の注文が入って、バタバタしてしまったりするものなんです。
酒の仕込みのシーズンになると私は酒づくりに付きっ切りでカフェに顔を出せなくなるので、スタッフと試行錯誤しながら、誰でもスムーズにカフェを運営できるオペレーションを確立したいです。
─ 今後の展望を教えてください。
現在はランチとカフェタイムのみの営業(※取材日時点)ですが、今後は荒町エリアの飲食店とも連携し、夜間帯のバー営業も考えています。やはり、森民のお酒も楽しんでほしいですから。また、カフェ運営体制を安定させて、SNSにより一層力を入れたり、また新しい「できること」を増やしていけたらと思っています。
─ 「こんな蔵にしたい」というビジョンを、一歩一歩着実に実現していくための素晴らしい事業だと感じました。本日は、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
仙台市では、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるために、国の補助金などを活用し、前向きな投資や事業活動を実施する市内事業者に対し、その取り組みを後押しする『仙台市地域産業応援金』を支給しています。
今般の原油価格高騰等の影響を踏まえ、新たに「原油価格・物価高騰等加算」を新設し、支給額を増額してます。詳しくは地域産業応援金のページをご覧ください。
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