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更新日:2023年10月11日
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目次
ITを活用して業務効率化を図った事業者や新設備導入により生産性向上を図った事業者などを取材し、その取組を「生産性向上事例集」として紹介しています。生産性向上等のポイントを分かりやすく紹介していますので、是非ご覧ください。
株式会社泉自動車学校 仙台市泉区実沢字新坂沢1
泉自動車学校は1976年に開校し、「お客様第一主義」を掲げ、サービスの向上に取り組み続けています。不利な立地と18歳人口の減少という課題を克服するため、次々とITを活用した手だてを打ちました。教習生との連絡用チャットツールやオンライン学科教習などいくつもの”県内初”に果敢にチャレンジし実績を上げています。
1976年に設立した泉自動車学校は、「お客様第一主義」を理念に掲げ従業員一丸でサービスの向上に取り組んできました。他社に比べて交通の便が悪く、立地条件は不利。その上、少子化が進み18歳人口は減少の一途。こうした逆境の中、2004年に就任した半澤修司社長は次々と新たな取り組みを行い、業績を伸ばしています。マイナス要素をはね返すエネルギーの源と具体的な取り組み内容をお聞きました。
普通のことをしていても人は来ない
――社長に就任された頃、会社はどのような状況でしたか。
2004年に代表取締役に就いた当時の年間入校者数は800人ほどでした。しかしその後入校者数は減り続け、2008年頃には600人台となり、何とかしなければという状況でした。
――どんな課題があったのでしょうか。
当社の主要顧客層は18~19歳の若年層です。18歳人口は90年代をピークに減り続け、将来的にも下降の一途と見込まれます。加えて当社は泉区の中でも中心市街地からの交通の便が悪く、「このままでは誰も来なくなる、他社と同じことをしていてはダメだ」と思い、お客様から選ばれるための「差別化」が必要と考えました。
10年がかりのCI戦略に着手
――差別化には何から取り組まれましたか。
お客様が一目で「泉自動車学校」だと認識できるようにすることが重要と考え、2012年頃からCI(コーポレートアイデンティティ)戦略に着手しました。首都圏の自動車学校などでは、顧客獲得のために戦略やブランディングに力を入れているところが多いですが、県内の自動車学校でそのような取り組みはほとんどありません。
ITのコンサルやデザインを手がける株式会社マジカルリミックス(青葉区)さんのサポートを受けて会社のロゴをリニューアルし、パンフレットなどの印刷物、ユニフォーム、看板、車体や建物の外観などを順次刷新しました。統一されたデザインでその企業の特徴や個性を多くの方に知っていただくことが企業価値の向上につながると信じ、10年がかりでブランドイメージの構築に取り組みました。
利便性向上に向けて“宮城県初”の取組を連発
――他にはどのような取組をされたのでしょうか。
交通の便が悪いことも大きな課題でした。立地場所は変えられないので、お客様が通いやすくなるように送迎バスの乗降場所を約300ヵ所設置し、「自宅から徒歩3分以内の場所への送迎」を実現しました。2016年には送迎予約とバスの現在地を確認できるアプリを導入し、利便性向上を図りました。これは県内初の取り組みです。前日午後までに予約を受け付け、最短ルートを割り出して送迎を行っています。
――通いやすさの向上以外にも取り組まれたことがあるとお聞きしました。
入校手続きが煩雑だったことも課題でした。以前は、入校希望のお客様にその都度一人ずつ1時間以上かけて入校説明を行い、大量の書類に記入いただいていました。非常に効率が悪く、繁忙期には入校希望者を長時間お待たせしてしまうこともあり、なんとかしたいと考えていました。
そこで、オンライン申込受付システムを2020年に導入。こちらは県内の同業者が先に導入していましたが、業務効率化には欠かせないので当社でも導入を決めました。Webから簡単に入校手続きができるので、お客様の時間と手間を大きく省くことができ、当社でも従業員の負担軽減・時間短縮を実現できました。
――宮城県初のオンライン学科教習も導入されました。
国の施策により自動車学校の学科教習の一部のオンライン化が認められ、当社では2021年に導入しました。オンデマンドで24時間受講できることが最大のメリットです。教材制作とシステムの導入に費用はかかりましたが、指導者の人件費や受講者のバス送迎費等の削減、フロントスタッフの対応の簡略化などを考えるとメリットが大きく上回ります。導入当初は5割程度の利用だったのが、現在は9割以上が利用しており、お客様にも強く求められているサービスだったことが分かります。前述のマジカルリミックスさんには、Web入校手続きやオンライン学科教習などIT導入の際にいつもご支援いただいています。
業務効率化で新たに実践できたこと
――インストラクター(教習指導員)の担当制は以前から実施されていますが、社長の就任後に何度か制度を変更されました。
以前から、お客様のサポートの充実化を図るためにインストラクターを担当制にしていました。しかし、お客様が担当を変えてほしくても言い出しづらいようでは逆効果だと考え、一旦廃止しました。その後、担当制のメリットを生かしつつお客様のニーズにも対応できるよう、インストラクターとフロントスタッフのダブル担当制として復活させました。インストラクターとは教習日程などを直接やりとりし、フロントスタッフには悩みや心配ごとを相談できるようにしたのです。
――お客様はインストラクターやフロントスタッフとどのようにやり取りするのでしょうか。
ビジネス用チャットツールの「LINE WORKS」を導入し、スマートフォンで連絡を取り合えるようにしています。コストも安く使い勝手がいいですね。従業員とお客様が直接個別にやり取りを行いますが、会社側は管理画面で内容を確認できるので安心です。これは宮城県の業界初の取り組みで、現在も他社では導入していないと思います。
現在は、ある段階で自動的にインストラクターを変更する制度にしています。お客様は希望するインストラクターを選択でき、変えたくない人は申し出てもらいます。この形なら、「変えてほしい」と言い出しにくい人にも利用してもらいやすいと考えています。
――これらの取り組みの成果はいかがですか。
600人台まで落ち込んでいた年間入校者数が、2021年は1180人に増加しました。業界全体が縮小するなかでの実績アップはありがたいですね。入校する方の居住範囲が広がっているので、当社の評判を聞いて遠くからでも来てくれる人が増えているのだと思います。
IT化が進んでも人と人のコミュニケーションは重要
――入校者数が増えたことの要因をどう考えておられますか。
小さなことの積み重ねが実を結んだと思います。「これさえやれば一発逆転」みたいなウルトラCがあれば楽ですが、そんなものはありません。担当制度でインストラクターとの距離の近さや相談しやすさが喜ばれ、チャットツールやバスアプリで利便性が高まり、オンライン学科教習で自宅受講ができる。オンライン受講は当時どこもやっていなかったので、非常にインパクトがあったようです。
IT化は業務の効率化を推進するものですが、当社ではまず顧客満足度を高めたいという思いで取り組みました。業務手順が変わるため、従業員は新たに習得することが増えましたが、ITツールで教習生とコミュニケーションを深められることは仕事のやりがいにつながっています。
――社長就任以来さまざまな改革を行ってこられましたが、社内の反発はありませんでしたか。
業界自体がかなり保守的で、変化が受け入れられにくい体質であることは確かです。しかし、もはや昔と同じやり方では通用しない、経営理念に掲げる「お客様第一主義」を本気で体現しなければならないと考えました。当社はもともと妻方の家業であり、私は30代で入社しました。数年後に社長に就いたため、正直なところ最初は風当たりの強さを痛感しました。厳しかったです。自分の話に説得力を持たせるためにはどうすればいいかと悩み、社長就任後に教習指導を学びにいき国家資格を取得しました。そのあたりから話を聞いてもらえるようになったと思います。
IT化は今後もより一層進めますが、人と人とのコミュニケーションを省く考えはありません。お客様との関係性を豊かにするためのツールとして考えていて、スタッフには「お客様に喜ばれるように」と常に伝えています。密室である教習車の中では、ちょっとした言動がきついと受け取られがちです。相手が心を閉ざすともう話は聞いてもらえませんから。うちへ通ったお客様には「泉自動車学校でよかった」と思ってもらいたい、それが一番の願いですね。
――今後の展望について教えてください。
入校者数が増えてもコミュニケーションがおろそかにならないよう、オペレーションを少し見直し、職員が働きやすく、かつお客様にご満足いただけるサービスの提供をさらに追求したいです。
IT化できる余地はまだあるので、知恵を出して方法を考えていきます。新規事業としては、教習所のスペースを生かしてドローン教習ができないかと模索中です。突破せねばならないハードルは多いですが、一つ一つ乗り越えていくのはやりがいがあります。
――選ばれる自動車学校になるために、お客様目線で様々な取組を実践されていること、大変貴重なお話でした。ありがとうございました。
取材日:令和4年2月17日
事業者情報
仙台市泉区実沢字新坂沢1
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仙台市では、市内事業者の前向きな投資や事業活動を後押しするため、補助金を活用し様々な取り組みを行っている事業者の方を取材し、『事業に役立つ!!補助金活用術』として補助金の活用事例集を発行しています。
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仙台市では、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるために、国の「生産性革命推進事業」などを活用し、前向きな投資や事業活動を実施する市内事業者に対し、その取り組みを後押しする『仙台市地域産業応援金』を支給しています。今般の原油価格・物価高騰等の影響を踏まえ、新たに「原油価格・物価高騰等加算」を新設し、支給額を増額しています。詳しくは、地域産業応援金のページのページをご覧ください。
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