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更新日:2024年11月7日
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報告書全文(PDF:1,836KB) / 概要版(PDF:366KB)
地方自治法第252条の37第1項に基づく包括外部監査
仙台市では平成31年4月に、これまでの「仙台市行財政改革推進プラン2016」から新たに「仙台市役所経営プラン」を策定し、戦略性をもった行政経営のために3つの実施方針を定め、その実行のための具体的な実施項目を設定する形で市役所”経営”をスタートさせたところである。また定員管理の適正化に資することを目的として新たに「仙台市定員管理計画」を併せて策定している。
この背景として、近年では経常収支比率が90%台後半で推移し、義務的経費の増加が今後も継続する見通しになっており、その中で人件費は歳出の2割程度を占め大きな割合となっている点があげられる。そのため、新たな行政ニーズに対応しつつ職員数及び人件費支出の適正な管理を行うことが求められており、併せて仙台市の個々の職員が、その能力をより効果的に発揮することが求められている。
人件費は歳出全体に占める割合が高いものの、これまでの仙台市包括外部監査にて当該テーマを選定されたことがなく、全市横断的に人件費の算定及び支給手続に関する適切性を確認する必要性が高いと感じたため、今回テーマに選定した。
仙台市における平成30年度の人件費は1,548億円(連結)と経常費用の19.4%を占め、義務的経費として費用に占める割合が大きい。(出典:仙台市の財務書類P4行政コスト計算書(平成30年度決算))
人件費は行政運営に必須のコストではあるが、経費としてのボリュームが大きいことから、労働と勤務実態に照らし、公正・公平に3E(経済性・効率性・有効性)の観点から説明責任が果たされているかについては特に市民の関心が高い領域と考えられる。また、適法性のある支出が行われているかについても非常に関心が高い事項であり、これらの観点を市民に明らかにしていくことは非常に意義があると考えた。
昨年度の包括外部監査で一部の部署、一部の期間において過重労働の兆しが垣間見えた。この点、実際に担当者に質問したところ、「行うべき業務が多くて手が回っていない状況もある」との回答も聞こえてきた。
このような熱意・熱量に依存した運用では、過重労働を引き起こす懸念が生じる。いまのところ短期的には熱意に支えられ効果的に遂行されているものの、仮に長期的に過重労働が放置されてしまうと労働効率や生産性が低下してしまい、結果的に市の業務遂行が非効率になってしまうのではないかとの懸念も同時に感じた。
ちょうど働き方改革関連法案が平成31年4月1日より施行され、民間企業のみならず公的分野においても、その働き方について検討すべき課題としての重要性は増大してきており、労働基準法の改正により時間外労働時間の上限が設定されることになった。時間外手当は時間外労働時間を基礎として支出されるものであるため、時間外労働時間が正確に把握されているのか、仙台市職員の人事管理は適切及び適法に行われているのか確認する必要性も高いと考えた。
(総論)
今回の監査では、仙台市の人件費について特定の部局に限るのではなく全市・各局横断的に監査対象とした。
対象としては、一般事務を行う市長部局、専門的な公的サービス提供を行う消防局・教育局、公営事業を営む水道局・交通局・ガス局・市立病院などであり、個々に幅広い領域での多様な働き方があり、歴史的な過程をたどったうえで、各々が望ましい管理となるべく仕組みを構築し運用していた。
監査の結果として見えてきた事実としては、人件費という統一的な事象に対しての異なる運用である。特に、保有する情報量や形式の不統一が見られた。また諸手当集計方法や手当の支給要件を確認する調査の頻度が、同じ仙台市の職員に対する人件費支給であるにもかかわらず統一されていなかった。部局によっては、システム化が十分に図られず人手をかけて集計作業を行うような仕組みも残存していた。給料表や特殊勤務手当などの違いはあるが、給与支給に対する基本的な仕組みは結局同じであるため、給与計算・支給・時間管理という面では、統一した運用が可能な部分もあると思われるし、統一した運用にした方が効率的な運用となる部分もあると思われる。現在は徒に人手や手間をかけすぎており、非効率な運営となっていると思われる。
仙台市が行政サービスを行っていく限りは、職員への支給も続いていく。管理体制の非効率についての改善を行わず、これが続いていくのであれば、累積すると将来の莫大な費用となる。非効率についての改善を行わないと将来費用の「著しい非効率」となる可能性が高い。
システム化を含めた全般的な仕組み構築には制約があるかもしれないが、手作業が介在するとどうしてもヒューマンエラーは生じる。コストに対して、必要以上に人手やコストをかけすぎるのは妥当ではない。
市民へのサービス提供という本業に集中するため、給与計算や支給管理等標準的な管理業務は、なるべくシステム支援を受けることを検討する時期に来ていると考える。そのような検討を行うにあたり、十分に対応が至っていない部分に対して、令和元年に動き出した「内部事務系システム最適化検討委員会」において、実効的な議論がなされることを期待する。
基本給は毎月変動するものではなく、当初のシステム設定を誤らない限り、誤りは生じないと考えられる。事実今回の監査の中では、この点での誤りは検出されなかった。
一方で、超過勤務時間の把握や通勤事実の確認、退職手当の計算等、勤務実態や要件を確認するという点では、特に手作業での集計や計算が介入する領域で誤支給が度々発生していた。
ひとたび誤支給が生じると、他にも生じていないかの確認や追給等事務処理の増加が不可避である。支給に関しては複数者による確認がなされているが、それでもある程度の誤支給が発生しているため、ダブルチェックの徹底などの追加的な人的対応だけでは不十分とも考えられる。仕組みの再構築も含めて、抜本的な確認体制の改善が必要である。
例えば、通勤手当などは、事実と異なる支給がなされているのではないかとの疑念を抱かせる事項が検出されていたことから、調査の水準や内容について検討することが望まれる。交通費相当をあらかじめ支給する現行の方法も不正受給の余地が比較的介入しやすい制度であるため、実費精算なども含めてその仕組み自体について検討することが望まれる。
全体的な仕組みや誤りの検出是正体制のほか、個々の業務単位でも働き方に対する検討や取組自体が不十分と考えられる。
業務過多になる場合は、一般的には人を増やす、時間外での対応という形で対処することになるが、これだと仙台市の人件費は増大する一方である。並行してそもそもの業務の改善が必要であるが、これが適切になされないと結果的に効率的ではない運用が続いていくことになる。
それぞれの職員1人1人は真面目に業務を実施している印象だが、それゆえに前例に倣って業務を適切に遂行する意識が先行し、改善の意識については物足りない。場合によっては、やめる業務の決定、業務の優先順位付けが必要になるのではないかと感じる。
これまで以上に、これらの改善の必要性及び意識づけが職員に浸透し、さらに業務改善、組織効率化などが促進されるような仕組みづくりを行う必要がある。
(各論)※指摘事項のみ抜粋
項目 |
区分 |
報告書ページ |
内容 |
改善措置 |
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通勤手当の現況確認について |
指摘 3-1 |
74 |
通勤手当について、実際の通勤経路と異なる申告をして通勤手当を収受しているのではないかと思われる事象が検出された。 実効性のない形式的な調査であるならば実施する意義はなく、適切に調査を実施する必要がある。例えば独立した人事担当者が、サンプルベースで現状確認の追加確認を行うような仕組みについても検討し調査の実効性を高めるべきである。 |
項目 |
区分 |
報告書ページ |
内容 |
改善措置 |
---|---|---|---|---|
36協定違反及び報告漏れについて |
指摘 5-1 |
89 |
交通局においては、「1日単位の時間外勤務命令の限度時間の超過」及び「休日労働させることができる日を超えた休日労働の命令」は、36協定違反として、所属課に違反状況と再発防止策を記載させ、総務課労務係に報告することとなっている。令和元年度は1名の報告漏れを含め9名の36協定違反が発生していた。 総務課労務係が中心となり、超過勤務を命ずる所属長に36協定に関する認識を高めてもらうこと、再発防止策について具体的な対応策の検討を行うことにより、再び36協定違反が生じないように努める必要がある。 |
|
平日から休日にかけて夜間勤務を行った場合の給与の考え方について |
指摘 5-2 |
90 |
サンプル調査の結果、平日21時から翌日(休日)6時までの勤務について、すべて休日給として給与が計算されている事象が発見された。21時から0時までが平日、0時から翌6時までが休日であるが、規定に明文記載はなく、慣習としてすべての時間を休日給として計算しているとの回答を得た。 現在の取扱いについてはどこにも明文化されていないことから、明文化した上で判断の余地が入らない運用を行うべきである。 |
項目 |
区分 |
報告書ページ |
内容 |
改善措置 |
---|---|---|---|---|
支給誤りを防止する体制構築について |
指摘 7-1 |
104 |
令和元年から同2年にかけて、諸手当2件、退職手当1件の支給誤りが発生していた。 この誤支給の発生原因は事務処理上の誤りとのことであったが、事務処理の過程では通常複数担当者によるダブルチェックは行われており、その上でも生じてしまった事象であり、不当である。 チェックが形骸化していないかも含め、事実に応じた正しい支給が行われているかの観点から、検証する仕組みが十分に機能しているかなど根本的な仕組みの再構築を検討すべきである。 |
令和6年11月7日公表(PDF:115KB) |
通勤現況調査の実施方法について |
指摘 7-2 |
105 |
通勤現況調査は、所属長が各所属の担当者を調査する形で実施されている。所属長自らを対象として確認する際は、本人が自己評価を行わず、準ずる立場の者にやってもらう形が求められている。しかし現況調査実施状況を確認した結果、自らを対象にしているにもかかわらず、自己確認で終わっているものがあり、ルール通りの運用はなされていなかった。 例えば、人事管理を行っている部署が調査実施者となるような仕組みも含め、いま一度実効的な調査方法について幅広に検討すべきである。 |
令和6年11月7日公表(PDF:80KB) |
調査で入手する書類の不足について |
指摘 7-3 |
105 |
住居手当の現況調査において、家賃額の直近の支払い状況が確認できる書類が添付されていない事例が含まれていた。 調査を行う以上はその趣旨を全うできるように適切に実施すべきである。 |
令和6年11月7日公表(PDF:78KB) |
項目 |
区分 |
報告書ページ |
内容 |
改善措置 |
---|---|---|---|---|
所属長の確認について |
指摘 9-1 |
116 |
タイムカードに所属長の確認印がないものが発見されたため、運用の徹底をされたい。 |
令和3年10月25日公表(PDF:69KB) |
超過勤務手当の支給誤りについて |
指摘 9-2 |
119 |
タイムカード上、打刻があったが、超過勤務データに反映がなく、代休取得もない事案が検出された。 確認体制の強化を図ると共に、適正な人件費支出の観点から、超過勤務手当の支給誤りをなくす仕組み作りが必要である。 |
令和4年3月16日公表(PDF:88KB) |
所属長の確認について |
指摘 9-3 |
123 | タイムカードの確認欄に所属長の押印がないものが散見された。市の運用として定められているルールであるため、遵守が求められる。 | 令和3年10月25日公表(PDF:72KB) |
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