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更新日:2016年9月20日
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いくつかの病的な症状が確認される場合や、周囲の人から見て奇異な言動をとっている場合は、まるでその人の心の全てが病気に侵されてしまったように思われがちです。しかし、本人の心には健康な面が多く残されており、健康な面が残されているからこそ不安や緊張を感じているとも言えます。そして多くの場合、治療はこの健康な面に働きかけることにより行われます。急性期の症状の多くは一過性に経過し、やがて「本来の自分」を取り戻すことができます。病気のために人格が変化するというよりも、家族をはじめとする周囲の人とのトラブルなど、むしろ病気になったための二次的な出来事が及ぼす人格への影響のほうが大きいのです。
世界各国で様々な研究が進められ、今では特有の分裂病症状を引き起こす「発症しやすさ」あるいは「病気へのかかりやすさ」が注目され、それを「脆弱性」と呼んでいます。脳の発症脆弱性が統合失調症の原因と考えられており、それは遺伝因子、妊娠や出産時の障害、社会的な環境因子、人格の発達過程など、多くの因子の相互作用で形成されると考えられています。この脆弱性には脳の神経伝達系(主にドーパミン神経系)の障害が重視されており、その仕組みもかなり明らかにされています。この脆弱性が発病や経過(再発や症状の慢性化)にも関係しています。この脆弱性と心身両面からのストレスの相互作用で発病するという考え方(脆弱性-ストレス仮説)が現在最も広く受け入れられています。
もしも、統合失調症の発症が遺伝だけで決まるとすれば、全く同じ遺伝子を持つ一卵性双生児の発症一致率は100%になるはずですが、実際には、一卵性双生児を対象とした研究で50%以上の一致率を報告しているものはほとんどありません。また、統合失調症の両親を持った子どもが一生を通じて発症する危険は約45%といわれています。つまり、統合失調症の病因には、遺伝因子以外のものが関係しているのです。高血圧症や糖尿病など他の一般的な病気と同じように、病気になり易い体質は遺伝している可能性はありますが、少なくとも、ある一定の年齢に達すると必ず発症するような遺伝病ではありません。統合失調症の脆弱性に関係する遺伝子を探求する研究が数多くなされていますが、いまのところ確実なものは発見されていません。
多くの研究が行われてきましたが、家庭環境や子育ての失敗が統合失調症の原因であるという科学的な根拠は見出されていません。しかし、重要なことは、発症後の再発率などその後の経過の良し悪しには、両親など本人の身近な人たちの関わりが大きな影響を与えるということです。逆に言えば、家族がこの病気について理解を深め、本人への対応を工夫することで、経過を良いほうに変えることができるのです。
一般的に統合失調症においては、急性期後の回復期に一時的に注意力・集中力・意欲・関心などが低下したり、発症時からそういった目立たない症状が持続したりすることがあります。そのために個人の活動や社会への参加が制限され、普通の生活がしづらくなる状況に陥ることがあります。
例えば、意欲低下の症状が起きると、通常の人間関係に支障をきたすようになり、社会参加の場面で言えば継続して働くことが困難になるなど、心身機能、個人の活動、社会参加のそれぞれのレベルで障害を抱えることになります。また、それに病気に対する偏見が加わると、さらに生活がしづらくなるということになります。
しかし、治療と同時にリハビリテーションや福祉サービスを利用することで、それぞれのレベルにおける障害を軽くしたり、障害があっても社会で暮らしていくことが可能になります。そして、併せて病気に対する偏見をなくしていくような社会的な取り組みをしていくことが必要なのです。
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