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ページID:44341
更新日:2019年12月10日
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター
センター長 教授・工学博士
遠藤 哲郎 氏
『東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)』は民間拠出による国内初の研究開発センターとして2012年4月から稼働しています。設立資金だけでなく、事務方の給与も含め、全て外部から資金を調達し、運営を行っています。設立のきっかけは2011年3月に発生した東日本大震災です。この震災により東北大学における全てのクリーンルームの機能が停止。「日本の電子デバイス分野をリードしてきた東北大学のアクティビティを消してはいけない」という東京エレクトロン様の強い思いとリーダーシップが、半導体分野の皆様と仙台市をはじめとする東北の皆様のサポートを集結させ、起案から設置まで8ヵ月という短期間で完成しました。仙台市には復興特区により、税制面での優遇制度を講じていただき、大変感謝しています。『CIES』は「東日本大震災からの復興、発展、飛躍」を大きなテーマとして掲げています。産学連携で共同研究を推進しており、集積エレクトロニクス技術を用い、新産業の創出に寄与することをミッションとしています。景気の後退などにより、企業の本社直轄のコーポレートラボが消えつつある現在、当センターでは、基礎研究というより、企業が商品として求める応用研究を実践しています。大量生産はできませんが、社会実装できるよう、鋭意研究開発を推進しています。現在、国内外の約70社に『CIES』を活用していただいております。
優れた技術を開発しても、市場が求めるものをつくらなければ商品として普及することはありません。当センターでは商品として流通することを念頭に、1.スピントロニクスの技術をベースに、演算性能と消費電力のジレンマを解決する不揮発性アプリケーションプロセッサとそのIoT・AIシステム、2.シリコン基板の上にガリウムナイトライドを積層したガリウムナイトライドオンシリコン(GaN on Si)の技術をベースに、5Gから電気自動車・産業用ロボットへの応用を目指した高周波で動く小型・低コストで軽量な電源・電力変換システムの2領域をメインとした研究開発を行っています。いずれの研究開発も、実際に集積デバイスを試作しシステムまで開発しているのは世界で我々だけです。たとえば、スピントロニクスの技術をベースにした超低消費電力のICカードが完成すれば、カードを持った際に指先の体熱が電源になるほか、指紋認証も同時に行えます。このようなICカードはすでに社会実装のフェイズまで来ています。また、現在の装備を変えることなく、ICタグでの生産管理などセンサーネットワークを構築することも可能になります。
当センターの一番の強みは東北大学の全学を通じた協力体制です。工学、通信、情報関係など常時、20教室以上の先生方が協力体制にあり、多くの分野で基礎研究が進行。企業のあらゆる要望に応えられるだけでなく、世界と渡り合える研究成果も次々に生まれています。学術的にも世界トップレベルの研究をしている一方、企業サイドの人たちと現場レベルでの話を共有できることも強みになっています。海外においても「大きなプロジェクトを泥臭く最後の段階までつきあってくれる大学」として認知されている歴史があります。
今後は、Society5.0の実現に資する本格的IoT産業や自動運転など次世代モビリティーで活用される革新的アプリケーションプロセッサと電源を含むモジュールシステムの開発などを推進していきたいと考えています。電気自動車に関しては、スピントロニクス技術により自動運行システムの低消費電力を従来の100分の1以下にしたり、GaN on Si技術により様々な電装モジュールの電力変換効率と電力密度を従来の10倍以上にできたりすることもあり、関連業界から期待と注目を集めています。エネルギーの有効利用という考え方に関しては、「あと数回しか携帯電話を使えない」など、東日本大震災の際に経験した不安が礎になっています。地球の資源は限られていますので、創エネよりも省エネの視点に立ち、新たな産業の創出に寄与していきたいですね。また、現在学んでいる学生たちには、「市場や企業が求めているもの、企業が向いている方向性」などについて民間企業のトップから話をしてもらい、携わっている研究の有用性を実感してもらうほか、研究成果や企画などを4半期ごとに評価。社会の仕組みを実感してもらうなど、現実に即した人材育成にも注力しています。
(2019年8月23日取材)
東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター
所在地:宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1
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